Up 5月9日 作成: 2024-12-07
更新: 2024-12-09




      『菅江真澄全集 第2巻』(未来社, 1971). p.43
    ケニウチにいづれば、しばやの軒に、ゑびすめ、いたくとりかけてほしたり。
    なべて比磯辺の昆布は帯のごとく細ければ、ほそめとやいふらん、ながめとやいはんとひとりごとすれば、しりより来かゝる男のいはく、
    ひんがしのいそにはをよぱねど、過来給ひしウシヂリのこなたなるヒラダナヰ(平田内)のひろめは、もとめいとよけん。
    それにつぎては、このケニウチにこそあらめ。
    ことしは鯡のこのあたりには群来さぶらはで、させることなう、いまより、かゝるわざをし侍る。
    此あたりの鯡のさかりは、海に魚の山をなし、ぜに、かねは、たゞ、ふりわくものゝやうにおぼへしに、このけかち(飢饉)にあひぬ。
    さりけれど此昆布のよければ、いそくさをくひて、いのちいきよと、あめよりのさづけにや。
    いつくさなき島のあはれ、おもひやるべし。