Up 機械化による過耕起──プレーリーの砂漠化 作成: 2024-07-14
更新: 2024-07-14


      篠田 (2021), p.52.
    ‥‥ 19世紀初めに,アメリカでは,ウマかラバがひく犂を用いた農法が使われていた.
    「雨が犂に続く」というスローガンの下,移民は西部の半乾燥地の草原(プレーリー)に入植していった.
    19世紀の終わりには,雨が多く収穫も良好であった.
    20世紀初めになって,トラクターがウマとラバにとってかわり,第1次世界大戦(1914-1918年)後,25万台となった.
    農民は,祖父の世代と比べて,15倍の耕地を耕すことが可能となったのだ.
    すでにこのとき,プレーリーの下に眠っていたレス土壌は,耕地化によって露出し,土壌侵食(風食と水食)を受けやすい状態となった.
    トラクター台数の増加とともに,1930年代に断続的に発生した暴風は,ダストボウルといわれる砂塵嵐をひき起こし,プレーリーは砂漠にかわった.
    運が悪いことに,当時,20世紀最悪という干ばつに襲われ,風食を受けやすい状況にあった.
    当地の農民の多くは環境難民となり,300万人以上が平原を去った.
    第2次世界大戦(1939-1945年)後,軍需品の組み立てラインが民生用に転用されると,トラクターの台数が増え,1950年代には1920年代の10倍となった.
    こうして,アメリカ農業の機械化が完了した.
    とはいっても,約20年おきにプレーリーで発生する干ばつによって農業生産は依然として左右され,土壌侵食の問題は深刻化した.

      同上, p.46.
    レスとは,0.01-0.05 mmの粒径をもつ細粒な堆積物(シルト)で,ミネラルに富み肥沃な土壌を生成するが,土壌粒子が強く結びついていないため,耕しやすいという利点がある一方,侵食を受けやすい性質をもっている.
    レスは現在,草原などの植生の下に埋もれているが,農耕などの人間活動によって植生がはがされると,風食の影響を受ける.



  • 引用文献
    • 篠田雅人 (2021) :「人類と砂漠化」, 沙漠研究 31-2, 2021. pp.45-61.