Up 「モンスター」にしているもの 作成: 2008-03-01
更新: 2008-03-01


    カブトムシに「ここでは自分勝手に動き回ってはならない」と教えることはできない。 「教える」という行為の形が,この場合考えようがない。 (実際,想像してみるとよい。)
    カブトムシがモンスターであるからだ。

    人間の赤ん坊も,生まれてしばらくはこのカブトムシと同じである。
    その後時間が経つ毎に,モンスターの度合いがマシになっていく。
    ただし,「マシになっていく」というだけ。
    カラダが大きくなる・イコール・モンスターでなくなる,ではない。
    現に,「ここでは自分勝手に動き回ってはならない」の類のことが通じないモンスター人間が増えてきて,社会問題化している。


    「教える」が成り立つためには,教える者と教えられる者が一定の共通基盤の上に乗っていなければならない。 カブトムシに教えることができないのは,この共通基盤というものが立たないからだ。
    この共通基盤の成り立たない存在のことを「モンスター」と謂う。

    「モンスター」は,カラダ格好には現れない。
    ひとは,「自分と同じカラダ格好の者は自分と同じ」と錯覚する。 そして,相手に対し「教える」がぜんぜん通じないことを見出して,びっくりする。
    (カブトムシなら,カラダ格好でモンスターとわかるので,「教える」が通じなくてもびっくりしないし,そもそも「教える」を試みない。)


    「教える」が成り立つための共通基盤とは何か?
    「常識」「教養」「知識」「専門性」といったことばで言い表している<もろもろのこと>である。
    ──途方もなく膨大なものであって,「もろもろのことである」というようにしか言えない。 (言えないが,しかしカラダは了解できる。)

    モンスターをモンスターたらしめているものは,「常識」「教養」「知識」「専門性」といったことばで言い表している<もろもろのこと>の欠如である。
    そして,「モンスターでない者も一方でいる」という事実は,つぎのことを示唆する:

        <もろもろのこと>の獲得の機会を失したことが,
        いまモンスターでいる原因・理由である。