Up 作成: 2008-03-13
更新: 2008-11-25


    世の中の出来事に問題を見るとき,ひとは問題の根底に<制度>を措く図を描く:


    問題解決を「制度改革」と定め,制度変更に進む。


    制度変更は,決して問題の解決にはならず,それどころか,却ってよりひどい問題を引き起こす。
    「改革」は中止され,「改革」の後遺症の手当のステージへと進む。

    なぜ「制度改革」は失敗し,よりひどい問題を引き起こすことになるのか?
    ──間違いから出発しているからである。
    間違いとは?
    ──<問題を制度の上に載せる図>である。


    制度は,複雑系の一つの均衡 (その都度の均衡) を表している。
    制度は,複雑系の表出である。
    一方,問題も複雑系の表出である。

    「構造」の考え方ができれば簡単にわかるように,制度 (複雑系の一表出) をいじって問題 (複雑系の一表出) を解決するという発想は倒錯である。

    制度を変えるとどうなるか?
    均衡を壊された複雑系は,改めて均衡づくりをする。
    その均衡は,結局,もとの制度 (旧制度) である。
    新制度は,「偽りの制度」になる。
    この「偽りの制度」が,複雑系の均衡づくりを邪魔する。
    そして,よりひどい問題を引き起こす。


    問題を制度の上に載せる間違った図を描く者はだれか?
    基本的に,行政である。
    そして,行政が号令を発すると,<お上意識>がこれに共振して,間違った図を信奉する集団心理が社会に起こる。(「改革」バブル)


    ここに二つの<間違った図>が重なった興味深い現象がある。
    二つの<間違った図>とは,
      「ゆとり教育」(本質は,体系バラバラ主義)
      「国立大学の法人化」
    であり,これが重なった現象とは,国立大学が「法人化」の一環として行った課程再編である。

    体系バラバラ主義が学校教育を損なう様が,「モンスター」の発生。
    体系バラバラ主義が国立大学の教育を損なう様は,「モンスター」の素通り (モンスター学生 → モンスター社会人)。 ──教員養成課程であれば,モンスター教員の生産になる。

    本論考は,この内容を論ずる。
    全体構成は,つぎのようになる:

      モンスター教育 (1) ─「モンスター」の意味
        §「モンスター」の意味
        § 大人がモンスターに変身する時代
        § 子どもがモンスターとして放任される時代
        § モンスター大学生
        § モンスター教員

      モンスター教育 (2) ─ 学校教員養成課程
        § モンスター教員養成課程
        § 体系バラバラ主義
        § GPA制度,CAP制
        §「教員免許更新講習」

    (1) では,「モンスター」の概念を考察する。 今日の「勉強しない大学生」「本を読まない大学生」をとらえるスキームの考察を兼ねたので,若干話を横に逸らしている感があるが,参考になるところもあると思うので,付き合っていただけたらと思う。
    そして,(2) で,学校教員養成課程の話に入っていく。
    なお,「教員免許更新講習」は,付録として取り上げた。