Up 汚染水の経路 作成: 2024-08-19
更新: 2024-08-20


資源エネルギー庁 (2018) から引用:
 
原子炉の内部に残る、溶けて固まった燃料(「燃料デブリ」と呼ばれます)には、水をかけて冷却状態を維持していますが、水が核燃料に触れることで、高い濃度のセシウムやストロンチウムなどの放射性物質を含んだ「汚染水」となり、原子炉建屋内に滞留しています。
これが基本的な汚染水発生のメカニズムですが、さらにこの汚染水が増える要因がもうひとつあります。
福島第一原発には、敷地内に大量の地下水が流れています。
この地下水が、水素爆発や地震などの影響で損傷を受けた原子炉建屋に流れ込むことや、破損した建屋の屋根から雨水が流れ込むことにより、建屋内で高濃度の汚染水と混ざって、新たな汚染水が発生するのです。




TEPCO (2017) から引用:



資源エネルギー庁 (2019) から引用:
 
まず重要なことは、この汚染水が建屋の外に流れ出すことを防ぐことです。
そこで、建屋の中に滞留する汚染水の水位を、建屋周辺の地下水の水位よりも低くし(内外水位差)、その状態を保つことで、汚染水が建屋外に流出することを防いでいます。
ただしその結果、建屋周辺の地下水は水位の低いほう、つまり建屋内に流れ込むことになり、屋根の破損した部分などから流入する雨水とともに、汚染水と混ざりあって、新たな汚染水が生じてしまいます。

資源エネルギー庁 (2019), 廃炉・汚染水対策チーム事務局 (2021) から引用:


【建屋屋根の補修】
建屋屋根の破損部から雨水が流入することをふせぐため、補修工事を実施
【フェーシング】
モルタルなどで敷地を舗装することで、雨水が土に浸透して地下水になることを防ぐ
【地下水バイパス】
山側の高台に井戸(地下水バイパス)を設置 。建屋に近づく前に地下水をくみ上げる。くみ上げた地下水は東京電力と第三者機関で分析をおこない、放射性物質の濃度の基準(運用目標)を下回ることを確認して排出している
【サブドレン】
建屋近くに井戸(サブドレン)を設置。地下水をくみ上げることで、建屋周辺の地下水の量を減らして水位を低く抑え、建屋に流入する地下水の量を抑える。くみ上げた地下水は浄化処理し、地下水バイパスと同様に運用目標を下回ることを確認して排出している
【陸側遮水壁(凍土壁)】
建屋周辺を取り囲むように地中に配置した「凍結管」という管に冷却材を送り込むことで、周辺の地盤を凍結させて壁をつくる。これにより建屋内への地下水の流入量を抑える
【汚染水の浄化処理】
ALPS 等で汚染水に含まれる大部分の放射性核種を除去
【タンクの増設】
高台の溶接タンクに ALPS処理水を保管
【海水配管トレンチ】
海に繋がる配管内の汚染水を処理
【地下水ドレン】
海側の地下水を汲み上げる井戸
【海側遮水壁】
海への流出を防ぐ鋼鉄製の壁