5.10 先天性-後天性の区分の解消


     内的なプロセスを規定する神経細胞間の興奮伝達の関係は,生体の誕生以前からつくられている。そしてこの関係性には,誕生以前と以降の間に質的な変化はないと考えられる。関係の布置である興奮伝達の関係性は,質的な分節化を本質的に拒むのである。

     したがって,PDPモデルに即く場合,《先天性−後天性》の二分法は成り立たない。そして,先天性と後天性の別を前提していた旧来の本質遡行的な問いは,この二分法の解消とともに無意義となる。