3.9 問題空間の探索


     Newell and Simon,1972 にほぼ倣って,“問題解決”をつぎのように定式化する(註1)

     先ず,“タスク環境”の概念を導入する。

     つぎに,問題の受容として,タスク環境の内的表象が問題解決主体の中につくられるとする。この内的表象は,既に内的表象として存在している“方法(ストラティジー)”とともに,“問題空間 problem space”を構成する。問題空間は,謂わば問題解決プログラムのデータ部を構成する。

     最後に,問題解決を,

    1. 目標の導出
    2. 目標の到達に向けての,ストラティジーの選択肢の探索(問題空間での探索)
    3. 目標に到達する探索経路のうち最も適切なものの選択
    が情報処理の形で行なわれる過程であるとする。((3)は適宜省略される。)

     こうして,問題解決は“問題空間の中の探索”として表現されるものになる。即ち,《ストラティジーの選択とそれの適用》により,所与の問題に対応する表象が次第に解に対応する表象に変化していく,という図式である(註2)

     この探索は,ストラティジーが適用される表象をノードとし,ストラティジーを選択肢とする木 tree で表現される。



    (註1) Newell and Simon,1972 における“問題解決”の定式化では,実際多くのことが曖昧なままにされている。その定式化は,論理的というよりは,むしろ非常に感覚的である。

    (註2) この発想の元には,H.A.Simon の意志決定理論がある:
      “サイモンの意志決定理論は,彼を含め,知的なコンピュータ・プログラムを作ろうとする初期の試みの中で,より一般的な「問題解決」の理論へと発展していった。マネージャーの意志決定を研究するかわりに,可能性空間の探索であるタスク(例えば論理学の定理証明や簡単なパズルを解くことなど)が研究されることになる。”
      (Winograd and Flores,1986,pp.33,34)