Up 「温度」の形式を探る 作成: 2024-07-28
更新: 2024-07-28


    「温度」のことばは,多様なな場面・文脈で使われる。
    これは,「温度」とは何かを知って,「温度」のことばを使っているのではない。
    慣用として使っているのである。
    実際ひとは,「温度とは何か?」の問いに答えられない。

    「温度とは何か?」の問いに対し答えることになるものは,「温度」の形式──多様なな場面・文脈で言われる「温度」の<普遍形式>──である。
    「温度とは何か?」に答えられないとは,「温度」の<普遍形式>が捉えられていないということである。

    というわけで,「温度」の形式を改めて探ってみよう。


    ここで手探りの端緒とするのは,つぎの事態である:
      系に生じた温度の凸凹は,次第に均されて,全体が同じ温度になる。
      そしてこの後,系自身からは,温度の凸凹が生じることはない。
      (温度の凸凹が生じることがあるとすれば,それは外部からの作用に因る。)

    この事態は,つぎの事態と似ている:
      水面にインクの滴を落とすと,インクは水に拡散し,全体の均質化に至って止む。
      赤玉白玉同数を容器に入れて振ると,赤玉白玉の分布の均質化に至って止む。


    「均質化に至って止む」は,系の要素が停止した相ではなく,系の存り方で圧倒的に確率の高いのが<均質>だということである。
    ある系において状態 S が現れる確率が高いとは,Sを現す要素の構成は何通りもある──要素の組み合わせの数が多い──ということである。
    「均質化に至って止む」の内容は,「要素の組み合わせの数が圧倒的に多いのが,<均質>の場合」である。

    こうして,「温度」の形式は,一つに,「要素の組み合わせの数が圧倒的に多いのが,<均質>の場合」から導かれそうである。
    しかし,「温度」で「要素」や「均質」をいきなり考えることは難しい。
    そこで,手探りとして,「赤玉白玉同数を容器に入れて振ると,赤玉白玉の分布の均質化に至って止む」の形式の捉えから始めるとしよう。