Up 組織の本当の大事を見失った組織に 作成: 2011-07-20
更新: 2011-07-20


    大学は,建物でも人でもなく,文化である。
    建物・人は,この文化の構成要素である。

    文化は伝統である。
    文化には,形成の長い歴史がある。

    長い歴史をもつ文化も,壊れるのは簡単である。
    建物の変更,人の異動で,これまでの文化は大きく失われる。
    人が同じなら建物を替えても文化は保たれる,とはならない。
    建物が同じなら人を替えても文化は保たれる,とはならない。

    そして,これまでの文化を大きく失わせるものに,制度変更がある。

    「法人化」の国立大学は,アメリカの有名大学のようになろうとしている。 そしてこれを,制度変更で実現しようとする。
    任期制の導入は,その一環になる。

    日本の大学がアメリカの有名大学のようではないことを遺憾とする論は,二つが最初から別のタイプの大学であることを見ていない。
    アメリカの有名大学は,メジャーリーグのチームである。一級プレーヤーが世界から集まる。
    日本の大学は,高校を卒業して入団した者を一級プレーヤーに育てていく日本のプロ野球チームである。 育てることをやめ,「自分たちはいまからメジャーリーグとしてやっていくことにした」と言っても,世界の一級プレーヤーが集まることにはならない。

    翻って,日本の大学は<人を育てる>を文化の中心的な要素にしている。 <人を育てる>は,組織の本当の大事の一つである。 これを失ったら大学でなくなる。
    一方,任期制は<人を育てる>を無くすものである。 任期制は,大学を人を育てない・人が育たない組織にする。

    大学経営者は,「自分たちはいまからメジャーリーグとしてやっていくことにした」を言わねばならないと思っている。 メジャーリーグが成り立つかどうかは構造的に思考すれば答えは明らかなのだが,人は構造的思考に疎い。 そしてこれは大学経営者においても同様というわけである。