「気温」は,生活ではこれをあたりまえにしているが,それが何かと問われると大多数が答えられないというものである。
先ず,気温というものは,存在しない。
気温は,温度計が決めるものである。
例えば,地球大気圏の「熱圏」は,
というのでこの呼び名になっているわけだが,温度計 (「寒暖計」) をそこにもっていけば −190ºC くらいを表示することになる。
この差は何かというと,測るしくみ──測ろうとするもの──が違っているわけである。
即ち,2000℃ は大気の分子個々の熱運動量を計ったものであり, −190ºC は大気と温度計の間の熱交換が均衡するときに温度計が表示する数値である。
熱圏は大気がひじょうに薄いので,後者の温度はひじょうに低いものになる。
われわれが「気温」と呼んでいるものは,温度計を人の身長くらいの高さに置き,そして空気と温度計の間の熱交換が均衡したときの温度計の表示を読んだときに,表示されている数値である。
ここで問題。
その空気は,熱運動をどこから得たのか?
太陽光 (電磁波) が空気 (の成分になっている気体分子やその他微小物質) に直接熱運動エネルギーを与えている?
それは,割合的に僅かということになる。
柴田他(2011), p.477 から引用:
太陽放射束密度スペクトル
大気上端 (実線) および地表面 (破線) での観測値。
UV, VIS, IR はそれぞれ紫外線域,可視光線域,赤外線域。
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太陽光から熱運動エネルギーを受け取るのは,地上の物質である。
その物資は,
- 熱をもち,空気中に熱 (赤外線) を放射する
──気体分子のうち水蒸気や二酸化炭素などは,このときの熱を吸収できる
- 熱運動し,近くの空気成分に衝突する
──この衝突が空気中に伝播する
実際これが,気温が実現するということである。
気体分子における《太陽光の赤外線は吸収しないが,地表からの赤外線は吸収する》──これはどういうことなのか?
二つの赤外線は波長が異なる,ということである。
前者は波長が短く,後者は長い。
気体分子は前者には共振しないが,後者には水蒸気や二酸化炭素などの気体分子が共振するというわけである。
水蒸気や二酸化炭素を「温室効果ガス」と呼ぶときの「温室効果ガス」の意味は,これである。
(窒素や酸素も,熱運動する温室効果ガスとの衝突から運動エネルギーを得ることによって,気温上昇の要素になる。
しかしこの形による気温への貢献は,温室効果ガスの貢献度と比べてごく僅かである。)
気温のもとは,地表の熱である。
そして地表の熱のもとは,太陽光である。
翻って,地表に届く太陽光が減少するときは,地表の熱が減少するときであり,気温が低下するときである。
そして地表に届く太陽光を減少させるものは,雲である。
特に,地球の温暖化・寒冷化は,雲がこれを差配している。
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